チェンナイを発って、さらに南にあるいくつかの町をのんびりと巡る5日間ほどの旅に出ました。
まず向かったのは、チェンナイの南東にある小さな町、カーンチープラムです。
「インド夜想曲」(タブッキ著、須賀敦子訳)で、語り手の「僕」は、マドラスの人智学協会会長との対話の中で、気に入った場所として、カーンチープラムのカイラサンク(カイラーサナータ)寺院をあげています。「なにか痛々しい、そのくせ魔術的なところがあって」と形容しています。
この古い寺院(8世紀初頭)を訪ねたときは、ほとんど人がいなく、しんとしていました。午後の強い日差しのもとで、美しい廃墟のようなこの寺院は、「痛々しい」というよりは、もう少し大らかな、そして、シヴァ神を祀っているにもかかわらず、どこか内省的な雰囲気を感じました。
今回の旅で、ヒンドゥー教の寺院をいくつも訪ねましたが、このカイラーサナータ寺院は、気に入った寺院のひとつです。
一方で、この町で一番大きな寺院、エーカンバラナータル寺院では、巨大な回廊や人々のにぎわいに圧倒されました。中庭で、ちょうど結婚式をやっていました。
カーンチープラムは、門前町としてだけでなく、絹織物でも知られています。
家族で営んでいる手織りの工房(と言っても普通の家です)を見せてもらうと、
金糸を織り込んだサリーを織っているところでした。
結婚用の豪華なものでした。
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