ずっと気になっているのに、なかなか手に取る機会がないまま
時が過ぎてしまい、いつの間にか忘れ去ってしまう、
そんな書物が手元に何冊もありますが、
なかには、ふとしたきっかけで読み始める本もあります。
南インドへの旅を思い立ち、準備を進めている過程で
やっと手にした本があります。
それは「インド夜想曲」(アントニオ・タブッキ 作)。
不思議な雰囲気を湛えた本です。訳者は、須賀敦子さん。
出だしから引き込まれました。
イタリア人の「僕」がインドで失踪した大切な友人を探して、
ボンベイからマドラスへ、そしてゴアへと旅をする物語です。
全体は3部に分かれていて、それぞれが4つの短いエピソードからなっています。
そのエピソードの連なりがなんとも言えない神秘的な深みを感じさせます。
読者は、ひとりのヨーロッパ人が迷い込んだインドの深層への旅へと
つまりミステリアスな迷路へと誘い込まれていきます。
南インドへ旅立つ直前に旅行者が読むのにふさわしい本かどうかは
わかりませんが、今回の私たちの旅の目的地のひとつである
マドラス(今はチェンナイ)についての記述は、大いに興味を惹かれました。
もっとも、私たちの旅は、タブッキの物語とは全く違った、
もっと呑気なものになるでしょうが。(そう願っています。)
もうすぐ出発です。
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