コルマールという町の名前は、以前、耳にしたことがありました。
フランス、アルザス地方の美しい町ということで。
この町の名前が深く心に刻まれたのは、須賀敦子さんの未定稿「アルザスの曲がりくねった道」のことを知った時です。残された原稿はほんの冒頭のみですが、「わたし」の友人のオディール修道女の故郷であるコルマールが重要な意味を持ってくることが予感させられるのです。
もっとも、わたしたちのアルザス旅行は、もっと呑気なものでした。
コルマールは、寄木造りの家並みが美しい、素敵な町でした。
ちょっとばかりツーリスティックな雰囲気がありますが、
でも、どこかのんびりした田舎町の風情がありました。
プティット・ヴニーズ(小さなベニス)と呼ばれる場所では、
小さな運河にゴンドラ風の小舟が客を乗せて、行ったり来たりしていました。
例のごとく、ケーキ屋さんやパン屋さんをぶらぶらとのぞいて歩き、
町の雑貨屋で、安売りをしていたクグロフの型をひとつ買いました。
大きいのは持って帰るのに大変なので、一人用の小さなものを買いました。
アルザスのシンボルともいえるコウノトリの絵が描かれているものです。
町の高い建物の屋根には、本当にコウノトリの巣がありました。
「アルザスの曲がりくねった道」は、おそらくあたり一面のブドウ畑の中を
うねるように通る道のことなのでしょう。このあたりは、ワインの名産地で
ワイン街道と呼ばれる道沿いに、小さな村や町が点在するのです。
南仏とはちがって、やはり北方の気配が感じられる風景でした。
内陸のため、夏は暑く、冬は寒いということです。
私たちが訪れた9月中旬は、日差しが強く、暑い日が多かったです。
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