旅をしている時だけが旅ではありません。
帰ってきてから本当の旅が始まる、とも言えます。
そしてその旅は、終わることなく続くわけです。
そこで、6月に行ったロシアの旅のかけらを
少しずつ拾い集めていこうかと思います。
まずは、マトリョーシカ。
モスクワのイズマイロヴォのヴェルニサージュ(お土産市場)で、 手に入れました。
この市場は、チープなおみやげ品や雑貨などが
ずらりと並んだ露店にごちゃごちゃと並べられているのですが、
いつまで見ていても飽きません。
ここで、いわゆる大量生産品ではないマトリョーシカを見つけて
思わず買ってしまいました。手で彩色された一点ものです。
そこで思い出したのが、20世紀初頭、ロシア・アバンギャルドの芸術家たちのことです。
彼らは、既成の芸術を否定し、ヨーロッパのキュビズムや未来派の影響を
受けたりしたわけですが、いっぽうで高く評価したのがロシア民衆芸術でした。
この場合の民衆芸術に、マトリョーシカも含まれるのかどうかはよくわかりませんが。
そして、当時のロシア絵本の世界を振り返ってみると、レーベジェフの作品、
例えば『サーカス』や『アイスクリーム』など、斬新なデザイン感覚にはわくわくしますが、
どことなくおもちゃっぽいですね。
その後、『三匹のくま』のヴァスネツォフや、『てぶくろ』のラチョフ、
『おかしのくに』や『ロシアの昔話』のマブリナなどが民衆芸術の素朴さと力強さの
伝統を取り入れた素晴らしいロシア絵本の世界を作り上げています。
それをさらに引き継いでいるのが、ノルシュテインとヤルブーソヴァ
(とくに『きつねとうさぎ』)だと思います。
この2人は、アニメーションだけでなく、絵本の世界でも素敵な仕事をしています。
というわけで、ヴェルニサージュで手に入れたマトリョーシカから
ロシア・アバンギャルド、さらにはロシア絵本へと思いは広がっていきました。
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